少なくとも現状の「SASAYAMA.史」としては、エポックメイキングだったといえるであろう2023年7月からの1年を経て、とても暑い初夏を過ごしている。自分としては思い入れ深く、当たり前のようだったものが当たり前でなくなることの多い7月は、また相も変わらぬ顔でやってきて、彼は間もなく16周年を迎える。
字面的には「16周年を記念して」となるこのリリースに何を選ぶのかは、驚くほどすんなりと決まり、今現在制作中でもある、いわゆる「カフカ楽曲群」の中から、特に難解とされる楽曲「橋」を16周年バージョン、としてシングル・カットした。
「私は橋だった」という印象的なフレーズがサビを侵食するこの5分弱の音の中には、キャリアを彩る種々折々の歌唱表現を持ち込み、バンドアンサンブルの中にアコースティックはもちろん、自然音から人工音まで、ありとあらゆるものをそこかしこに詰め込んだ「This is SASAYAMA.」という時間に練り上げた。
初聴きではどういう構成なのかすらよくわからないであろうこの音楽は、自分の中の名状しがたいこの16年を奇妙なまでに象徴し、また力強く認識して、やってくる。はじめてカフカを読んだときのあの瞬間を貫徹するかのように、文字は音に、行間は歌になったかのように佳麗を誇り、そして、ひどく俗っぽい。
一体何を言っているのだろう、という文字にとどめ、このテキストを終えることにするが、そうしてやってきては寝返りをうってきた16年のように、これからも素晴らしい音楽を創り、自分の歌を歌いたい。そして個人的にはカフカの生誕月でもある7月に、このリリースができることも嬉しく思う。
聴いてくれたそれぞれなりに存分に楽しんでもらえることを願いつつ、16周年を迎えます。
SASAYAMA.の音楽を見つけれくれて、どうもありがとう。17年目もよろしく。
2024.07.10 SASAYAMA.
冷たく光る凍える影 秘めた両手と崩れゆく牙
言葉はまだ役に立たない
風にあおられ 夢ははためき 轟くまぼろし
迷い込む旅人の形 繰り返すリズム Anymore
地図にはない 手すりもない 名前さえない
便りもない 待つしかない 誰も知らない
水に憧れ 夏は夕暮れ 心には花を
誘い合う人々の形 薄れゆくリズム
やってくる
私は橋だった 冷たく凍る
私は橋だった Anymore
戯れの春 秋を飛ばして 冬はうそ寒い
自殺志願 誘惑の神 破壊のシンフォニー
鳥の鳴き声 やがて足音 月の美しい夜
やがてくる その時を
落ちてゆく その時を
私は橋だった 私は橋だった
花も鳥も夢も風も水も役に立たない
ここらはいつでも凍えているが月は美しい
何もいらない 代わりならすべてがほしい
私は橋だった 橋だった
そのドアをくぐれ 知りたいと願え
貫かれるとも 寝返りをうて
私は橋だった 冷たく凍る
私は橋だった Anymore
何も Anymore